増大特集 細胞表面受容体
●構造的特徴:6回膜貫通型◆受容体の遺伝子:TRP
温度受容体TRPチャネル
富永 真琴
1
Tominaga Makoto
1
1自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター(生理学研究所)細胞生理研究部門
pp.436-437
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101503
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
TRP(transient receptor potential)チャネルはショウジョウバエの光受容器異常変異株の原因遺伝子として同定され,現在,七つのサブファミリー(TRPC,TRPV,TRPM,TRPML,TRPN,TRPP,TRPA)に分けられている。一つのサブユニットは六つの膜貫通領域とイオン流入のポアを形成する領域を持ち,四量体で機能的なチャネルを形成すると考えられている(図A)。ヒトではTRPNを除く六つのサブファミリーに27のチャネルが存在する。
最初の温度受容体TRPチャネルであるカプサイシン受容体TRPV1の1997年の発見以降,16年間で九つのTRPチャネル(TRPV1,TRPV2,TRPV3,TRPV4,TRPM2,TRPM4,TRPM5,TRPM8,TRPA1)に温度感受性があることが示された。2011年にはTRPM3の温度感受性も報告された。これらはTRPV,TRPM,TRPAサブファミリーにまたがっており,それぞれの活性化温度閾値は最も低いTRPA1(17℃以下)から最も高いTRPV2(52℃以上)まで幅広い(図B)。43℃以上の高温刺激と15℃以下の低温刺激は痛みを惹起することから,その温度域に活性化温度閾値があるTRPV1,TRPV2,TRPA1は侵害刺激受容体としても捉えうる。温度受容体TRPチャネルの大きな特徴は,温度以外にも多くのリガンドや他の物理刺激に応答する“多刺激受容体”として機能することである2-5)。
Copyright © 2013, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.