特集 生命科学のNew Key Word
7.組織
上皮-リンパ共生
磯村 源蔵
1
,
酒井 一由
1
Genzoh Isomura
1
,
Kazuyoshi Sakai
1
1藤田保健衛生大学短期大学解剖学教室
pp.454-455
発行日 2004年10月15日
Published Date 2004/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100603
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上皮-リンパ共生とは消化管入口の口峡にある扁桃の粘膜表面で見られる現象で,角化しない重層扁平上皮細胞の間に炎症が起こらないのにリンパ球が多数浸潤している状態をいう。唾液小体を観察していたStöhr1)が,ウサギ,ネコ,ハリネズミ,モグラ,コウモリの扁桃上皮の中を多量のリンパ球が口腔へ出るのを記載したのが始まりである。
扁桃は粘膜下組織におけるリンパ小節の集合をいうが,Fioretti2)は前述の上皮-リンパ共生,リンパ小節の集合,陰窩の存在,他組織と区別できる結合組織性被膜を周辺に有することの4点を備えることを扁桃の定義とした。扁桃の作用は口腔や鼻腔から進入する外来の異物に対する免疫機能や,細菌の進入阻止を中心とした防御的作用を果すことである3)。これは一般的な扁桃の記載であり,著者たちが扱っている実験動物スンクス(Suncus murinus)は口蓋扁桃のほかに消化管出口の肛門部周辺に肛門扁桃,膣扁桃および尿道扁桃4)を有していて,Waldeyerのリンパ咽頭輪に匹敵する構造である。口蓋扁桃とあわせてこれら肛門扁桃,膣扁桃,尿道扁桃で観察された上皮-リンパ共生について記載する。
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