基礎から応用へ
種と共生
大家 裕
1
1順大・寄生虫
pp.25-28
発行日 1975年4月1日
Published Date 1975/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200752
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我々はノミやシラミといった昆虫が,寄生虫という呼び方をされる生物のグループに属することを知っている.また,"ヒト回虫"が我々の消化管内に住む寄生虫であることを知らぬ人はないであろう.我々の祖先もまた,ずっと昔から寄生虫の存在について知っていたようである.紀元前1550年に書かれたエジプトの医書に,すでに回虫,条虫の感染,治療についての記載があるというし,旧約聖書にも寄生虫の由来についての宗教的な説明がなされている.もっとも,我々人間なり,あるいは動物なりの体内に,どうしてこういった寄生虫が存在するかについての科学的な説明ができるようになったのはそんなに古いことではなく,言葉としての表現法の問題だけであるにしても,"お腹に虫がわく"というような言い方は,最近までかなり一般的であったように思う.そして,我々が寄生虫という言葉から受ける印象は,虫卵検査を受けた経験とか,駆虫薬を飲まされた経験と交錯して,あまり快いものではないようである.
しかしながら,寄生虫によって営まれる寄生生活を詳細に調べてゆくと,そこには,この地球上の生物あるいは生命現象について,普遍的な理解を持つうえでいとぐちになるような大切な,そしておもしろい現象が数多く見うけられる.それは,寄生ということが,この自然界に存在する様々な生物が互いに影響し合ういくつかの基本的な型の一つであるということからも当然のことと考えられる.
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