特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
7.疾病
自閉症と感受性候補遺伝子CADPS2
古市 貞一
1
Teiichi Furuichi
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター分子神経形成研究チーム
pp.476-477
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100565
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自閉症は,1943年に米国の小児精神科医レオ・カナー(Leo Kanner)によって「早期乳幼児自閉症」として最初に報告された精神疾患である。「社会的な相互交渉の質的な障害」,「言語や動作などによるコミュニケーション機能の質的な障害」,「限られた興味の範囲や反復的な動き」の三つの主要な行動的特徴によって,3歳頃までに発症が診断される発達障害である1)。人口1000人あたり1人以上の高い発症率が世界各国で報告されている。典型的な自閉症に,類似した行動障害を示す特定不能の広汎性発達障害やアスペルガー症候群も含めた自閉症スペクトラム障害(ASD)では,1000人あたり6人の高率になる。男女比は4:1で,性差が特徴である。ASD小児脳のMRI研究で,約20%に大頭症が観察される。しかし,発達障害の発症を解明するために必要な乳幼児期の病理・生物学的な研究データは少なく,発症のメカニズムは不明である。
現在のところは自閉症を根治することができないため,患者を抱える家族の負担は極めて大きい。治療的な教育や対症的な薬物療法による障害の克服や代償が主な治療法である。2005年4月には,発達障害の支援を国・自治体・国民の責務として定めた法律「発達障害者支援法」が施行された。今年(2008年)になって,厚労省に「発達障害情報センター」が発足し(3月),国連決議のもと「世界自閉症啓発デー」(4月2日)も設定されるなか,自閉症研究の今後の展開に関心が高まっている。
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