特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
5.神経科学
長期抑圧
田端 俊英
1
,
狩野 方伸
2
Toshihide Tabata
1
,
Masanobu Kano
2
1富山大学大学院理工学研究部神経系情報工学研究室
2東京大学大学院医学系研究科神経生理学分野
pp.432-433
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100546
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●小脳LTD
シナプス可塑性(活動依存的なシナプス伝達強度の変化)は学習・記憶の生物学的素過程であるが,そのうち伝達強度の長期的減弱をもたらすものを長期抑圧(LTD)と呼ぶ。ここでは小脳LTDを例にとりメカニズムを概説する1,2)。小脳プルキンエ細胞(PC)は,全身の感覚情報や運動指令を伝える多数の平行線維(PF)と運動誤差を伝える1本の登上線維(CF)からシナプス入力を受ける(図A)。CFと一群のPFが同期してくり返しシナプス伝達を行うと(1~4Hz,100~600回),当該PFからPCへの興奮性シナプス後電位(EPSP)が数時間以上抑圧される。小脳LTDはPCにおけるPF入力の重み付けを変更し,運動協調を円滑化する運動学習に寄与する。
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