特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
4.シグナル伝達系
インスリン受容体シグナリング
北村 忠弘
1
Tadahiro Kitamura
1
1群馬大学生体調節研究所代謝シグナル研究展開センター
pp.414-415
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100538
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インスリンは糖,脂質,蛋白質の代謝作用のほか,細胞の増殖,分化,アポトーシスなど多岐にわたる生理作用を有するホルモンである。このような多彩なインスリン作用は,インスリンが細胞膜上のインスリン受容体と結合し,受容体チロシンキナーゼ活性が上昇することに端を発する1)。一方,インスリン受容体が生体におけるインスリン作用の発現に重要であることが実際に証明されたのは,1996年にインスリン受容体ノックアウトマウスが生後数日で高血糖とケトーシスにより死亡することが報告されてからである。その後,臓器特異的インスリン受容体ノックアウトマウスが次々に作製され,各臓器におけるインスリン受容体シグナルの重要性が明らかとなった2)。活性化されたインスリン受容体は,IRS蛋白やShcといった細胞内基質のチロシン残基をリン酸化し,下流の分子へとシグナルを伝えていく(図)。以下,本稿ではインスリン受容体シグナル下流分子のうち,主要なものについて概説する。
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