特集 癌の臨床検査
I 癌そのものをとらえる検査
3 癌組織産生物質"腫瘍マーカー"の検査
B.各論 5)ポリアミン
久保田 俊一郎
1
Shun-ichiro KUBOTA
1
1東京大学医学部第三内科
pp.1346-1349
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917611
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はじめに
ポリアミンは低分子の非蛋白性窒素化合物で,生物界に広く存在する.代表的なポリアミンは,プトレシン〔H2N—(CH2)4—NH2〕,カダベリン〔H2N—(CH2)5—NH2〕,スペルミジン〔H2N—(CH2)4—NH—(CH2)3—NH2〕,スペルミン〔H2N—(CH2)3—NH—(CH2)4—NH—(CH2)3—NH2〕である.哺乳動物においては,ポリアミンはアミノ酸のアルギニン,メチオニンに由来し,細胞の増殖,分化に密接な関連をもつ.ポリアミン合成経路のうち,オルニチンからプトレシンが形成される反応に関与するのがオルニチン脱炭酸酵素(ornithine decarboxylase;ODC)である.ODCは,静止状態の細胞で活性が低く,ホルモン,成長因子あるいは組織の再生などの刺激により増加する.また発癌物質投与によるマウスの皮膚癌1)あるいはラットの大腸癌2)で組織のODCが誘導される.
ポリアミン研究の歴史は古く,約300年前にさかのぼるが,臨床研究は,1971年にRussell3)により種々の癌患者で尿中ポリアミン排泄が増加するとの報告がなされて以来,癌の診断方法として,また治療に対する効果判定の指標として,尿・血液などのポリアミン分析が数多くなされてきた4).しかし,癌診断としてのポリアミンは,必ずしも癌に特異的でないこと,また早期癌の診断は難しいこと,などが明らかとなった.
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