Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
1885年Paul Ehrlichは酸性色素であるcoe—rulein-sを動物に静注し,すべての器官がよく色素に染まつているにかかわらず,脳だけはまつたく染まつていない事実を発見した。その後Roux, Biedle, Lewandowsky, Goldmann等はそれぞれtetanus toxin,胆汁酸,sodium ferricy—anideおよびtrypan blueを用いて同様の実験を行なつたのが,これらの物質が髄液内に注入されると,動物は重篤な症状を起こして多くは死の転帰をとるに反し,これらが静脈内に注入される場合は前者の10倍量が注入されても,なんら症状を起こさないことを確認した。以上のように血中に注入された多くの物質が脳組織内に侵入しないという事実は,脳が一種の防御機構を備えているということを想定させる。これに対し1921年にStern,さらに1929年Walter等により血液脳関門,Blood-Brain-Barrier (B. B. B.)と命名された。しかしその後の研究により,B. B. B. は単に先に述べたような有毒物質,色素あるいは異常代謝産物等に対してのみ透過拒否的に働らくばかりでなく,ほとんどすべてのコロイド,イオンあるいは有機物の脳内移行に対してもひとしく抑制的に働らく。従つてこれら物質の脳組織内濃度が血中のそれと平衡に達するためには,他の組織におけるよりはるかに長い時間を要することが明らかにされた。もちろんB. B. B. の成立機構はけつして単純なものではなく,この問題の解明には多角的な研究方法が要求されるのであるが,今回は私たちの行なつた形態学的検索の結果について述べてみたいと思う。
B.B.B.を形態学的に把握する目的で,次の諸項目について検索した。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.