Japanese
English
特集 情動―喜びと恐れの脳の仕組み
パニック障害の病態とその生物学的基盤
Clinical feature and biological basis of panic disorder
中川 伸
1
,
井上 猛
1
,
泉 剛
1
,
李 暁白
1
,
北市 雄士
1
,
小山 司
1
Shin Nakagawa
1
,
Takeshi Inoue
1
,
Tsuyoshi Izumi
1
,
Xiao-Bai Li
1
,
Yuji Kitaichi
1
,
Tsukasa Koyama
1
1北海道大学大学院医学研究科神経機能学講座精神医学分野
pp.51-57
発行日 2005年2月15日
Published Date 2005/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100364
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「不安」(anxiety)は対処不決定の漠然とした恐れの感情であり,一般に対象のある「恐怖」(fear)に対して,対象を欠くものを指す。正常な不安としては,生きている限り避けることのできない病や死への恐れ,生活,経済,宗教上の諸々の不安がある。一方,病的な不安とは,刺激が主体の内部で歪曲・肥大化されるために,客観的な危険に比して不釣り合いに強く反復して現れ,その処理に神経症的防衛規制を要するとされるものである1)。現在国際的にも汎用されている米国精神医学会の診断基準であるDSM-Ⅳ(Diagnostic and statistical manual of mental disorders-Ⅳ)において,不安障害はパニック障害,パニック障害の既往歴のない広場恐怖,特定の恐怖症(以前は単一恐怖症),社会恐怖,強迫性障害,外傷後ストレス障害,急性ストレス障害,全般性不安障害,一般身体疾患による不安障害,物質誘発性不安障害,特定不能の不安障害に分類される2)。これら個々の疾患に対する脳内メカニズムは未だ明らかにされていないが,プレクリニカルスタディからは「不安」「恐怖」の共通したメカニズムが,クリニカルスタディからは疾患特異的な所見が徐々に明らかにされつつある。本稿では,不安障害の中でもパニック障害に焦点を当ててその病的状態の臨床研究所見,その根幹にあると思われる生物学的基盤の仮説などを紹介する。
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