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近年,分子生物学や脳機能イメージングなど最先端の技術を用いた脳に関する多様な研究成果が得られるようになってきた。しかし,そうした個別の研究成果を統合した脳全体としての振る舞いを理解する必要がある。こうした作業は一研究者の努力でできるものではなく,多くの研究者によって得られた知識を集約・蓄積・体系化すると共に,それらを共有する環境を整備していくことが重要である1)。
「ニューロインフォマティクス」は,こうした関連する膨大な研究成果に関して,情報技術を効率的に活用した研究基盤の上で21世紀の脳科学研究を展開する,IT時代の脳・神経科学研究のための学問分野である。経済協力開発機構(OECD)においても,今後の脳研究の進展にニューロインフォマティクスが大きく寄与し,人類の生活・健康水準の向上や経済の発展に重要な役割を担うとして,2005年8月,ニューロインフォマティクス国際協力機構INCF(International Neuroinformatics Coordinating Facility)の設立が承認され,同年11月にスエーデンのカロリンスカ研究所に設置されることが決定された。2006年4月には事務局長としてノルウェイのJan Biaalie氏が就任し,開設の準備が始まった。わが国においても2005年4月,理研BSIに神経情報基盤センター(NIJC:Neuroinformatics Japan Center)の設置が認められ,2006年2月末,日本ノードの運用が開始された2)。今後,国内外の脳研究に関する情報の統合,体系・共有化を進めることにより,21世紀における科学技術の夢の一つとして,世界の研究者が協力し,IT基盤上でバーチャルブレインの実現を目指してニューロインフォマティクスが展開されようとしている。
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