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特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス
第2部 総説
Ⅲ 創薬インフォマティクス
ニューロインフォマティクス:動向と展望
Neuroinformatics:Trends and Scope
臼井 支朗
1
Shiro Usui
1
1理化学研究所脳科学総合研究センターニューロインフォマティクス技術開発チーム
pp.436-442
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100783
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21世紀を迎えた今日,コンピュータネットワークを中心とする高度情報通信技術(IT)の普及は,あらゆる学術分野に新しい展開をもたらし,われわれの外部環境を形成している宇宙や,内部世界である生命の理解に向けた研究も新たな時代を迎えている。特に,われわれの意識や思考,学習や記憶などの脳の高次機能は,1千億以上といわれる神経細胞の形態やチャネル蛋白,生体アミンなどの分子レベルの振る舞いと複雑に絡み合った神経回路網の動的相互作用の結果として創り出されている。こうした脳・神経系に関する研究成果が日毎に蓄積されていく一方で,研究の専門化・細分化が極度に進み,脳神経系全体としての機能をシステムとして捉えることが著しく困難になりつつある。正に「木を見て森を見ず,森を見て木を見ず」という危機的な状況に陥りかねない。
こうした現状を改善し,脳・神経科学をさらに飛躍的に発展させるためには,この分野における情報の解析・処理・伝達・蓄積・統合・保存・利用・継承などを促進する情報科学技術「ニューロインフォマティクス」の推進が不可欠といえる。特に,脳研究に関連する諸分野の個別の知見を記述し統合する数理モデルは,脳をシステムとして捉えるための様々な仮説を検証する思考のプラットフォームとして,また,膨大な知見を統合するための共通言語として,21世紀の脳・神経科学における研究基盤の中心的役割を担うことが期待される。
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