特集 細胞外基質-研究の新たな展開
特集「細胞外基質-研究の新たな展開」に寄せて
関口 清俊
1
1大阪大学蛋白質研究所
pp.82-83
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100179
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昨年11月のヒトiPS細胞(induced pluripotent stem cells)の樹立が生命科学の枠を超えて国内外に大きなインパクトを与えたことは記憶に新しい。ヒトES細胞に比べて倫理的な問題が少ない,患者本人の細胞から作るため拒絶反応がないなど,再生医療への応用の期待も高まっている。しかし,組織幹細胞を利用する再生医療と比較すると,多能性幹細胞を使う再生医療にはまだ多くの障壁があることを忘れてはならない。再生医療は基本的に細胞移植療法であり,ex vivoでの幹細胞の培養・増幅が不可欠である。多能性幹細胞を利用する場合は,さらに標的細胞への選択的分化誘導というより困難な条件も加わる。肝臓を例にしても,肝幹細胞の分離自体が未だ研究段階にあり,多能性幹細胞から成熟肝実質細胞を選択的に分化誘導するなど,まだ遠い先の話である。幹細胞に限らず,組織・臓器を構築する様々な細胞を,その本来の機能を保持したまま培養する方法論は,細胞培養技術が誕生してから100年以上経た今日でも最も先進的な研究課題の一つである。
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