特集 タンパク質間相互作用
6.酵素
ミオシンATPase活性におけるドメイン間相互作用
山本 啓一
1
Keiichi Yamamoto
1
1千葉大学理学部生物学科
pp.396-397
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100077
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ミオシン(myosin)はKühneによって筋肉から発見されたタンパク質であるが(myoは筋肉という意味),現在では植物を含む様々な細胞内に存在し,細胞運動や細胞内物質輸送など数多くの機能に深く関わっていることが知られている。
ミオシンには最低でも24のサブクラスが存在しており1),これらのミオシンはアクチンフィラメント上を動く速度や方向,1本のアクチンフィラメント上を離れずに長い距離動けるかどうかといった性質(processivity),および結合する相手や運ぶ荷物がそれぞれ異なっている。その基本構造は,エネルギー源であるATPを加水分解する部位やアクチンと相互作用する部位をもつモータードメイン,モータードメインに起こった小さなねじれ運動を回転運動に変えるコンバーター領域,コンバーターの回転を大きな動きに変えるレバーアーム,そして仕事に応じてさまざまなタンパク質や膜成分と相互作用する尾部ドメインからなる(図1A)。レバーアームは1本のαヘリックスとその周りに巻き付き補強する軽鎖という低分子量タンパク質からなる。アクチン上での運動方向はモータードメインとレバーアームの間にあるコンバーター領域により決まり,速度はモータードメインのATPアーゼ活性とレバーアームの長さにより決まる。Processivityは二量体構造(双頭構造)を必要とするので,モータードメインだけでなく尾部がコイルドコイル構造をとりうることも重要である。また,尾部の末端はほかのタンパク質あるいは膜成分と結合するので,ミオシンの機能の多様性には尾部も大きく関与している。
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