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CASE
患者:24歳、女性。
主訴:繰り返す強い腹痛
現病歴:1週間前より持続する強い腹痛を主訴に受診した。痛みは数時間にわたる腹部全体の持続痛であり、3日前から嘔吐を繰り返すようになった。昨日から四肢が痺れ、両足に力が入らなくなったため、救急要請した。以前から飲酒後や、強いストレスを感じた後、月経前に同様の腹痛発作を繰り返しており、3カ月前に上下部消化管内視鏡、腹部超音波、腹部造影CT検査を施行されたが異常は認められず、「胃腸炎」の診断で経過観察となった。腹痛時に不安感、四肢の痺れと脱力を伴うことがあり、「パニック発作/過換気症候群」と診断され、アルプラゾラム0.4mgを処方されたが効果はなかった。
既往歴:
#月経困難症;エストロゲン製剤を使用したことがあるが、腹痛が増強したため中止した
#うつ病/パニック発作;ミルタザピン30mg(1錠)1日1回夕食後、アルプラゾラム0.4mg頓用
#胃腸炎で複数回の受診歴がある
婦人科歴:月経は28日周期(整)、最終月経は3週間前、未経妊、最終性交渉は2週間前(配偶者と)。
生活歴:職業:事務職、喫煙:なし、飲酒:機会飲酒だったが腹痛をきたすので断酒した。
家族歴:特記事項なし。
現症:全身状態不良、意識清明。血圧124/82mmHg、脈拍数124回/分(整)、呼吸数16回/分、SpO2 99%(室内気)。頭頸部に特記所見なし。心音整だが頻拍様、呼吸音清。腹部はやや膨隆、腸雑音やや減弱、触診では腹壁は軟で圧痛・叩打痛・腫瘤は認めない。皮疹・関節炎はない。四肢にチクチクした痛みを訴えるが感覚に左右差はない。徒手筋力試験(MMT)は両側の前脛骨筋・腓腹筋で4-/5、他は正常。深部腱反射は正常。
尿中δ-アミノレブリン酸(δALA)の著明な高値を認めたため、専門施設に紹介してカウンセリングのうえ遺伝子検査を行ったところ、HMBS/PBGD遺伝子変異が認められ、急性間欠性ポルフィリン症(acute intermittent porphyria:AIP)と診断された。低分子干渉RNA(siRNA)製剤の導入によって腹痛発作は消失した。

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