書評
「構造と機能がつながる神経解剖生理学」—坂井建雄,小林 靖,宇賀貴紀【編】
北澤 茂
1
1大阪大学・生理学
pp.356
発行日 2025年4月1日
Published Date 2025/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770040356
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神経解剖学と神経生理学,さらに臨床医学のエッセンスを融合させた『構造と機能がつながる神経解剖生理学』は,神経科学を学ぶ医学や関連分野の学生にとって「画期的」な教科書です。
伝統的な医学教育では,解剖学で神経系の構造を,その後に生理学で機能を,さらに臨床医学でその障害と治療法を,段階的に教えてきました。この「王道」スタイルは,一部の学生には有効です。しかし,多くの学生(私もその一人でしたが)は,神経系の複雑な構造を「覚える」ところで挫折しがちでした。大脳基底核の複雑な構造は典型的な難所ですが,「行動選択装置」という機能に着目して,アクセルの役割を果たす直接路とブレーキの役割を担う間接路に分けて学ぶと,難なくクリアできます。さらには,直接路や間接路の障害としてパーキンソン病やハンチントン病の病態をとらえると,一気に理解が進みます。解剖・生理・臨床の統合は,学習効果を飛躍的に高めるのです。

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