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はじめに
非侵襲的脳刺激(non-invasive brain stimulation:NIBS)とは,頭皮上から苦痛を伴わない程度の磁気(場)や電流などの物理刺激を行い,脳の可塑的変化を誘導するリハビリテーション医療の手法である.NIBSがリハビリテーション医療で使用されるまでの過程について振り返ると,人類初の治療的電気刺激の記録は,紀元後43年にまで遡ることができる1).ローマ皇帝に仕えた宮廷外科医の記録によると,額に雷魚をあてることにより一過性昏迷患者の意識が回復し,突発性頭痛が軽減する,または雷魚が泳ぐ水槽に疼痛部位を浸すことにより症状が軽減する効果を認めたという.ヒトの運動は,生体電気信号(当時は「動物電気」“animal electricity”と呼ばれていた)に制御されていることを明らかにしたのは,「近代電気生理学の父」Luigi Galvani(1737〜98,イタリア)であり,1791年の偉業であった.生体電気信号はおろか電気という概念がないローマ帝国時代に,結果的に電気生理学的だと解釈可能な対症療法が経験則,あるいは天才的な閃きの元に行われていたことには感慨を覚える.それから幾年もの年月と,いくつものセレンディピティを経て,現在は,反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)や経頭蓋直流電流刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)に代表されるような,より洗練されたスタイルのNIBSが考案されている.特にrTMSはわが国でも,既存の薬物療法に反応しない大うつ病性障害の治療装置(高度管理医療機器,特定保守管理医療機器)として,2017年9月に承認されている.しかしながら,従来型NIBSが在宅リハビリテーション医療で活用されるには,高額な機器をある程度の知識と技術を持った者が操作する必要があるという問題を克服する必要がある.近年はうつ病の在宅治療時に,オンライン指導により患者本人,または介護者がtDCSを利用することを遠隔支援する試みが報告されてはいるが2),依然としてコストの問題は残る.
本稿では,医師や療法士だけでなく患者や介護者にもフィージビリティが高く,低コストである経頭蓋静磁場刺激(transcranial static magnetic field stimulation:tSMS)と経皮的迷走神経刺激(transcutaneous vagus nerve stimulation:tVNS)に焦点を当て,在宅リハビリテーション医療を促進するNIBSツールとしての可能性について考える.

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