連載 職場のエロス・4
唇の赤い花
西川 勝
1,2
1老人保健施設ニューライフガラシア
2大阪大学大学院臨床哲学博士課程前期2年
pp.77
発行日 2001年7月15日
Published Date 2001/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900396
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午後7時も過ぎた頃,詰め所の電話がなった。外来から「女性の新入院です。応援お願いします」と。その頃,女子病棟に看護士は配属されていなかった。トラブルが予想されたときだけ看護士が呼ばれていた。病棟には先輩の看護士が残リ,ぼくが行くことになつた。
外来の廊下は電気も消えて,診察室からの光が,外で待っている若い男性のうつむい横顔を開らしていた。患者さんの夫で,まだ新婚間もないらしい。妻の様子が最近おかしく「死にたい」と口走るようになつたので,やっとの思いで連れてきたという。診察は3時間近くにもおよび,入院の説得が続けられていた。
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