連載 「ゼロ」からはじめるオープンダイアローグ・10
バフチンにおける対話と「プロセス」
斎藤 環
1
1筑波大学医学医療系社会精神保健学
pp.164-169
発行日 2022年3月15日
Published Date 2022/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200988
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前回は逆説的な箴言を数多く遺したチェスタートンからはじめ、中井久夫の箴言がいかにプロセス志向であったかを検討しました。あらためて読むと、中井の著作にはオープンダイアローグの基本原則に通じる内容が数多く含まれています。これについては、機会を改めて論じてみたいと考えています。
ちなみに最近読んだ韓国のベストセラーエッセイ『あやうく一生懸命生きるところだった』*1は、タイトル通り「努力」「我慢」などをやめても幸せになれるよ、という趣旨の本ですが、通奏低音として「ゴール志向」をやめて「プロセス志向」になろう、という主張があります。著者は「物語中毒」というくらい映画や小説が好きらしいのですが、「物語」に「プロセス」というルビが振ってあったのには虚を衝かれる思いがしました。私には物語を「見出し」や「あらすじ」で理解したいという抜きがたい志向があるのですが、これは私自身が本質的に「ゴール志向」人間であり、だからこそオープンダイアローグ実践に惹かれたのだということがあらためて認識できたのです。
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