連載 「ゼロ」からはじめるオープンダイアローグ・8
「プロセス」をめぐる逆説
斎藤 環
1
1筑波大学医学医療系社会精神保健学
pp.584-589
発行日 2021年11月15日
Published Date 2021/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200951
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ラカンはなぜ「過程」を語らなかったのか
前回はかなり理論的に大胆な踏み込みをしました。ラカン派精神分析は多くの領域を意図的に語り残しているということ、それはひとことで言えば「過程」に集約されるということ、などです。
おそらくこうした指摘はあまり前例がないと考えられるため、異論や反論は大いに歓迎したいところです。もちろん筆者自身、ラカン理論に訓詁学的に通暁しているわけではないので、「セミネール海賊版のこの巻でラカンは過程(あるいは発達や学習)について語っている!」といった指摘があれば、この批判は撤回することにやぶさかではありません。ただ本音を言えば、仮にそうした断片的発言があったとしても、理論全体の枠組みとしてラカンが「過程」についての議論を大幅に捨象してきたのは事実であろうと確信してはいます。
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