連載 木田っちの、こんな所に行ってみたっち。・1【新連載】
—初めて行ってみた地—「ほっちのロッヂ」@軽井沢(長野県)
木田 塔子
1
1東京大学医学部健康総合科学科
pp.138-142
発行日 2020年3月15日
Published Date 2020/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200726
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制度からこぼれる人たちと、どうつながれるのだろう
紅葉の美しい11月下旬の軽井沢に、「ほっちのロッヂ」を訪れた。制度上は「訪問看護ステーション、診療所、病児保育室、デイサービス」が一体となった場所なのだが、共同代表を務める藤岡聡子さんが実現しようとしているのは、宮崎駿が『虫眼とアニ眼』*1という本の冒頭で可愛らしく描いた空想の町の世界である。それは人と人、人と自然の温かいかかわりがおのずと生まれる場だ。
なかでも藤岡さんのお気に入りは、「子どもたちが侵入するホスピス」と題された本のなかのワンシーンだ。ホスピスのベッドサイドで、おじいさんと男の子が「おじいちゃん、まだ死なないの?」「ハハ、もうじきだナア」と屈託なく話し、女の子はその会話を無邪気にさえぎって「おダンゴあげるね」とおじいさんの手元に泥だんごを置く。そのなかに「死んでいく」深刻さはなく、日常を生活して最期まで「生きていく」という営みがあることに気づかされる。藤岡さんの言葉を借りるなら「命のやり取りが身近にある場」でもある。
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