連載 MSEを穴埋め式問題で練習してみよう・8
認知症のケース(前編)
武藤 教志
1
,
小野 悟
2
1宝塚市立病院
2公益社団法人岐阜病院
pp.599-607
発行日 2019年11月15日
Published Date 2019/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200691
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今回は認知症の症状アセスメントがテーマですが、記憶や認知機能は、認知症以外の精神疾患でも非常に重要なアセスメントに位置づけられています。たとえば統合失調症は、今をさかのぼること160年前の1860年には「早発性痴呆」と呼ばれ、すでに認知機能障害がその中核的な症状として示されていましたし、現在も「陽性症状、陰性症状、認知機能障害」の3大症状から理解されています。また、老年うつ病や妄想性障害などの患者に認知症の症状が観察されることもあります。今回は、“記憶や認知機能に焦点を当てた精神機能のアセスメント”の学習として、身体科病棟に入院した認知症が疑われる患者の事例を読み進めましょう。
身体科でも精神科でも「認知症」の診断を受けた人やそれが疑われる人(以下、認知症の人)の入院が急増しています。認知症の人は入院という大きな環境変化によって精神症状・行動異常(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)やせん妄を発症し、深夜に大声を発したり、転倒の恐れが高いのに不意に離床したり、点滴ルートや膀胱留置カテーテルを自己抜去したりといった想定外の行動で、看護の負担は著しく増大します。また、高齢の患者を、指示動作がほんの数回できなかっただけで「認知症」だと看護師が思い込み、それが一人歩きして看護師間で共有されてしまい、「認知症だから説明しても理解できない」とされ、「慣れない入院環境は認知症を悪化させるから」という理由で「早く退院させよう」とあきらめてしまうことがあります。こうした事態に陥らないようにするために、MSEをしっかり行います。
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