特集 「処方薬依存」と「脱法ドラッグ」が大変なことになっておる
違法薬物使用を知った医療者に、通報義務はあるのか
松本 俊彦
1,2
1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室
2独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター・精神科
pp.29-36
発行日 2014年1月15日
Published Date 2014/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689101257
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大学病院精神科に勤務していた頃、当直をしていると、深夜に救命外来から緊急の呼び出しを受けることがありました。聞けば、交通外傷で搬送されてきた患者の尿中から覚せい剤が検出されたのだと言います。救急医は切迫した口調で、「確か警察に通報する義務があるんですよね?」と筆者に承認を求めてきます。これに対して私が、「通報義務なんかないですよ」と返すと、救急医は「馬鹿な!? こいつら野放しですか? 本人の将来を考えてもきちんと服役したほうが……」と食ってかかってくる……これがお決まりのパターンでした。
本当にこの手のやりとり、これまで何度したかわかりません。一体どこで教わったのでしょうか。「医師は患者の違法薬物使用を発見した場合には警察に通報する義務がある」と信じている医療者は意外なほど多いのです。
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