連載 いつでも・どこでも・かんたんチーム医療・2
―チーム医療の扉をひらく第1の鍵―捨てる―ロヒプノール・ハルシオン全面中止の取組み
趙 岳人
1
1医療法人健生会明生病院・精神科
pp.81-90
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100732
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きっかけはいつも現場から
親子の間に亀裂が入った「真夜中の事件」
A君との出会いは、4年前の今ごろの梅雨の時期でした。当時、高校3年生だったA君は季節外れのジャンパーを頭からすっぽりとかぶり、彼の頭ひとつぶん背の低い母親に手を引かれて診察室に入ってきました。「正体不明の声がするとか、誰かにつけ狙われるとか言うて、部屋に引きこもるとです」……黙っている本人の代わりに母親が訴えます。のちに統合失調症と診断された彼は、内服治療を主とする外来通院治療によって順調に回復し、高校卒業後に予備校へ進み、初診から2年の時を経て晴れて大学生となりました。
A君が大学生活を始めたばかりの頃に「事件」は起こりました。今からさかのぼること2年ほど前の出来事です。その日の診察室には、いつも1人で来るA君の隣にめずらしく母親の姿がありました。普段はとても温厚な彼の様子が、その日は明らかに違います。彼が軽く会釈をして椅子に座るか座らないかのうちに、やはり普段とは様子の異なる母親が口火を切ります。
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