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平成17年7月に「心神喪失者等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、医療観察法)」が施行され、約4年が経過した。本法による入院治療は全国に指定された指定入院医療機関で行われ、そこでは多様化している本法の処遇対象者(以下、「対象者」という)に対応すべく、数多くの治療プログラムが開発され実施されてきた。たとえば、一般精神医療でも主流である疾患別のプログラムや、薬物やアルコールの問題に焦点を当てたプログラムだけでなく、医療観察法の対象となる重大な他害行為(以下、「対象行為」という)の種類に合わせたプログラムや対象行為への内省をはかるプログラム、時には被害者でもある家族を対象としたプログラムなどがあげられる。
ところで、厚生労働省によれば平成21年8月1日現在における全国の入院対象者469名のうち女性対象者は89名で約2割を占めている。よく知られているとおり、女性のメンタルヘルスについては、女性ホルモン周期、閉経、それらとストレスの関連といった生物学的な問題や、ドメスティック・バイオレンス(DV)、共依存といったとくにパートナーとの対人関係のあり方の問題、さらには「性」「性役割gender role」「母性」あるいは「出産・育児」「仕事」「家庭」などに対する考え方や意識など、取り扱うべきさまざまな課題がある。そしてそれらは対象者の社会復帰を考える上でも間違いなく重要な課題であることから、著者らは医療観察法における入院医療においても「女性」という「性別」に焦点を当てたプログラムを行うことに意義があると考えている。そこで、本稿では国立精神・神経センター病院医療観察法病棟で試みられてきた女性を対象とした治療プログラムについて紹介する。
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