研究・調査・報告
不安を伴う統合失調症患者への看護師による認知行動療法的アプローチに関する一考察
三上 勇気
1
,
増田 有香
2
1福井県立大学看護福祉学部看護学科
2独立行政法人国立病院機構東尾張病院
pp.66-74
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100642
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はじめに
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;以下CBTとする)は、行動や感情は認知によって導かれるとされ、問題をセルフコントロールしながら合理的な解決能力を増大させることを狙いとする*1。CBTは統合失調症の治療にも適応され、海外では、急性期においても陽性症状の改善率が上がり妄想的確信度が減少するとの報告*2があり、また、看護師(Nurse;以下Nsとする)による統合失調症患者に対する短期CBTが症状を全般的に緩和させると報告*3されるなど、看護領域にもCBTが導入されている。
このような海外の動向を受け、近年国内においてもNsによるCBT的アプローチが行われるようになった。幻聴に対しては、原田*4が『正体不明の声』というハンドブックなどを用いて、幻聴体験の減少や対処方法の多様化を報告している。妄想に関しては、北野ら*5が信念変容法を用いて妄想的信念の内容変化や負の感情価の改善が見られたと報告し、また渡邊ら*6は、現実検討を試みることで患者の苦悩の軽減に成功している。しかし、まだ日本の看護領域における統合失調症へのCBTの実践・研究は乏しく、エビデンスに欠けるのが現状である。そこで今回、看護師によるCBT的アプローチを実施したところ、いくつかの知見が得られたので報告する。
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