特集 なるほど納得!高次脳機能障害者への適切なケア
「リハビリテーション」の、これが適切な方法です―統合失調症の認知障害との比較から
先崎 章
1
1埼玉県総合リハビリテーションセンター神経科
pp.32-47
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100552
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1 高次脳機能障害がなぜ注目されるのか
精神科では昔から高次脳機能障害を治療、看護してきた
昨今話題になっている(行政上の)高次脳機能障害とは、交通事故などによる脳外傷や、前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血、心停止蘇生後の低酸素脳症、脳炎など、脳神経の損傷による心理・行動上の障害を広く指します。統合失調症とは違って、MRIやCTで目に見える脳神経の損傷があり、その神経(回路)損傷に由来する行動上の変化があることから、神経行動障害などともいわれます。
このような患者は、行動や情動の障害が著しい場合には昔から精神科の対象でした。精神科病院の看護者ならたいてい、ヘルペス脳炎後遺症により著しい記銘力障害(5分前の出来事も頭に残らず忘却する)と情動障害(突然怒りのスイッチが入ると抑制がきかず興奮し、暴力をふるって保護室に隔離せざるを得ない)によって、家庭や施設での生活が困難な患者を経験しているはずです。
また、粗暴行為を繰り返す人や、社会道徳から大きく外れたことを行なった人が措置入院になり、精神鑑定を受ける際に、過去の脳挫傷の既往が明らかになることがあります。
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