特集1 「支え」と「介入」をめぐる精神看護4話
[第四話]43年目の介入。不潔恐怖症をもつ人へのあきらめないかかわりの結末
山根 國宏
1
,
有田 恭子
1
,
永見 和子
1
,
奥村 政子
1
,
山根 増子
1
,
平井 真一郎
1
,
小林 信夫
1
1明和会医療福祉センター・渡辺病院(療養病棟)
pp.30-35
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100300
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Tさんは不潔恐怖症状が強い。他患との交流もほとんど見られず、診察時も椅子に座ることができず、物に触るときはペーパーで拭いてから。他人との接触ができず、近づかれると飛んで逃げる、自分から声をかけることができないなどの状況で、集団のなかで孤立的な入院生活を43年間送ってきた人である。
入院当初より、緘黙、無為状態。明らかな幻覚・妄想状態による精神運動興奮はなく、早い段階で陰性症状中心の状態であった。病識はなく、主治医の記録では、診察室でも拒否的な状態は近日まで変わらなかった。「帰らせてください」という訴えも当初より変わっていない。攻撃性はないが常に周囲とは一線を画し、自分の世界で生活してきたことがうかがわれる。
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