特集1 看護と死
看護は「死」を超えるか―看護師と思索家との往復メールから
小宮 敬子
1
,
小林 康夫
2
,
井上 誉子
3
1日本赤十字看護大学精神保健看護学
2東京大学大学院総合文化研究科
3三楽病院
pp.10-15
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100174
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井上からの第1信 井上誉子
小宮先生
就職してからもう1年がたってしまいました。やっぱり日々思うことは多いです。
ちょうど1か月くらい前かな,1人の患者を看取りました。長く入院生活を送られた肝臓がんの男性で,最期には腹水がたまって大きなおなかをしていました。何度も何度も繰り返し肝性脳症を起こして意識がなくなるのですが,そのたびに点滴をするとまた普通の病院生活を送れるようになる方で,看護師や医師から「不死身だね」と言われていました。本人も意識が回復するたびに,「また脳症になっちゃったよ」と言っていました。
でも,だんだんと脳症になる間隔が短くなってきて,回復してもベッドの上だけでの生活になり,腹水のせいで自力で寝返りも打てなくなってきて,徐々に悪くなってきているのがわかるようになりました。脳症から最後の回復をしたとき,その方がふと,「なかなか死に切れないや……」と弱音……みたいなものを口にしたんですね。初めてでした。その次の日に再び脳症になって意識がなくなり,その翌日に亡くなりました。
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