特集1 看護と死
再び「現場のちから―傍らにいること」―死からはじまる人間の「近さ」のレッスン
小林 康夫
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1東京大学大学院総合文化研究科
pp.16-20
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100175
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「現場」との遭遇
昨年の春,旧友の武井麻子さんに招かれて看護師さんたちの前で話をする機会がありました。
わたしはかつて短期間患者としてある病院に入院したことがあるだけで,それ以外には,どんな立場ででもまったく看護の現場に立ち会ったことのない人間なのですが,選んだタイトルが「現場のちから―傍らにいること」でした。というのは,看護の本質とはなにかということを考えていて,それは,究極的に「傍らにいること」なのではないかと思うようになったからです。そしてもしそうなら,それは実は,人間にとってももっとも根源的なあり方に根ざすものなのではないかと考えはじめたからです。
すなわち看護は,医療の補助行為などではなく,医療よりももっと根源的なもの,人間にとっての最重要事である「近くにいる」ことの実践なのではないか,と。そして,その「近く」という問題を考えようとして,そのときは人称ということを考えてみた。つまり1人称的近さ,2人称的近さ,3人称的近さ――そういう区別を通して看護の「近さ」とはどのようなものなのか,を問いかけてみたのです。
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