連載 宮子あずさのサイキア=トリップ・45
病院は暴力に満ちている?
宮子 あずさ
1
1東京厚生年金病院
pp.104-105
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100105
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暴力をふるう権利はない
最近やっと、サービスの受け手から提供者に対する暴力が、問題として取り上げられるようになりました。たとえば、駅員や飛行機の客室乗務員。客から暴力を受けた経験がある人は、かなりの数にのぼるといいます。これまでは「お客さんだから」と泣き寝入りを余儀なくされていたのが、ときには警察への通報も含めて、毅然とした態度をとるようになっているようです。
最近になって医療の世界でも、患者さんによる医療者への暴力が、表立って語られるようになりました。実際は昔から、この暴力はあったのです。しかし、それが症状や苦痛ゆえのものならば、怒らずに受容しなければならない……。そんな使命感とあきらめが、私たちにあったのではないでしょうか。
特に看護師の場合は、医師を含めた他の職種に比べ、受容的であることが強く望まれます。暴力を受ける機会が多い上に、それに耐えるよう求められる。それどころか、患者さんを激昂させれば、それが看護師としての技量不足といわれかねない習わしすらあります。
当たり前の話ですが、患者さんには、医療者に対し暴力をふるう権利はありません。が、こんな当たり前の話でも、言葉にして確認したくなるほど、つらい目にあっているのです。
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