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プライバシーが守られた安心できる空間にしたい
当院は、眼下に日本三景の1つ、安芸の宮島、瀬戸内海が一望できる好立地にあります。
現代社会は複雑化を極め、ストレスが社会現象となっています。多様化した精神医療のニーズに応えるべく、個室のストレスケア病棟が平成12年に開設されました。
病室ネーム廃止がもちあがったのは、ストレスケア病棟の開設から2年が経過したときでした。当時、近隣地区ではストレスケア病棟や個室病棟自体が珍しいこともあり、他施設からの見学者、面会者が多い状況にありました。そんな中での病室ネーム廃止には、プライバシーを守り、安心して治療に専念できる環境を提供するという目的がありました。
病室ネームを廃止するためには、どのような準備が必要で、どのような方法がよいのかをさっそく検討しました。広島市内ですでに病室ネームを廃止した一般病院があることを聞き、すぐに見学させてもらいました。入退院の頻度が高い外科病院でしたが、病室ネーム廃止後も大きなトラブルはなく、「意識を変えることが大切です」との助言でした。
病棟ネーム廃止の取り組みが知らされたとき、スタッフが動揺したのは言うまでもありません。「どうしよう、こんなに入退院が多いのに」「大丈夫だろうか」「無理ではないか」とスタッフ間で囁かれていました。病室ネーム廃止で患者のプライバシーは保てる一方、病床数48床という広い作業動線の中で日々の業務に支障を来たし、これまで起きたことのないミスが起こるのではないかという不安をもっているようでした。
そこで筆者は、このスタッフの共通の不安を取り除くことができる手段、方法を、研究という形によって探すことにしました。
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