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1.はじめに
幻聴さんとの付き合いは本当に大変だ。私の場合はいろいろな幻聴さんが出てきて、喧嘩をふっかけてきたり、ねちねちとまとわりついてきたり、嫌なことも多い。特にヤクザ幻聴とチンピラ幻聴には、もういい加減にしてほしいという感じだ。その幻聴は、本当に私を蹴ったり殴ったりする。殴られたところは腫れてヒリヒリするのでシップを貼ることもある。扱いに困ったときには、警察に電話をする。しかし本当の警察はあまり頼りにならないので、“幻聴の警察”に連絡する。“幻聴の警察”はサイレンを鳴らしながら来てくれる。そして、チンピラ幻聴に困っている私のところに飛んできて、彼らを連れて行ってくれる。連れて行かれるときのチンピラ幻聴は、ギャーギャー言ってうるさい。でも最近は、警察に助けを求める前に、べてるのスタッフや仲間や向谷地さんに電話で相談することのほうが多い。そのほうがより安心だからだ。
そんななかで、大切な幻聴さんもある。“小泉さん幻聴”である。そう、あの総理大臣の小泉さんが、幻聴さんとして私のなかに現れるようになってもうすぐ2年が経つ。最初はかすかに聞こえてきただけだったが、1年ほど前から幻聴さんの主役になってしまった。
幻聴の小泉さんの周りには、武部さん、麻生外務大臣、森前首相、橋本前総理も出てきて、いろいろと生々しいやりとりをしている。最近は、幻聴の金正日が出てきてびっくりした。私の幻聴さんの世界もだんだん国際的になってきた。
幻聴さんがつらくてしばらく引きこもっていた私だったが、最近は、むしろ幻聴さんのお陰で人とつながることができるようになってきた。1人でいるとチンピラ幻聴が騒ぐから、人といないと駄目なのだ。
加えて小泉人気の影響で、私の幻聴さんも忙しくなってきた。そんなとき、当事者研究に誘われた。講演に行くついでに国会に行ってみたいと思っていたので、当事者研究をしたらそんな機会もくるかもしれないと思い、私の幻聴さんの世界を整理してみることにした。
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