特集 利用者に満足される「看取りのケア」
“死と医療”をめぐる三題―医療社会史の視点から看取りの文化の変遷を考える
新村 拓
1
1京都府立医科大学
pp.341-344
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901809
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死と医師
わが国の医療の歴史において臨終の場に医師がかかわるようになったのは,おもに明治以降のことである.それまでは,医師には手の施しようのなくなった患者をみたくないという気持ち,あるいは死のケガレを回避したいという気持ちがあり,「後は神仏に祈りなさい」という言葉を残して立ち去っていたのである.
臨終の場に残るのは家族や親族,友人であり,僧・山伏・修験者・巫女(みこ)らであった.彼ら宗教者・呪術師は治病・延命の祈りにつづく招魂・鎮魂の祈りを捧げるとともに,病人やその家族の苦悩を和らげるといった近代医学が切り捨てることになった部分を担っていたのである.
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