連載 知っておきたい医学情報・10
在宅ホスピスケアにおける痛みのコントロール(前編)―在宅ホスピスケアに必要な基礎知識
小笠原 一夫
1
1医療法人一歩会ペインクリニック小笠原病院
pp.807-811
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901752
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はじめに
当医療法人は,無床の診療所と「ホスピス訪問看護ステーション・いっぽ」からなる.開設以来がん末期の患者の在宅療養を積極的に支援してきた.開設以来8年間で在宅ケアしたがん患者は114人に及び,うち104人が既に亡くなっているが,そのうち95人が我々が家族と共に家で看取った在宅死である.しかもその数は年々増加の一途をたどっている.
私は,これまで痛みを持った癌患者とは病棟,在宅を問わず数多く出会い治療にあたってきた.在宅療養をしている方にとって,痛みを中心とした身体症状の緩和は大きな問題点の1つであり,それをきっかけにして在宅を心ならずも断念するということがないようその十分なコントロールがケア側に求められている.私はこれまでの在宅ケアの経験からペインクリニック医師としての技術,知識だけではがん患者の痛みはとらえ切れないことに気付いてきた.そこから「痛みだけを単独でとらえることはできない」「痛みのケアはトータルケアの一環である」という姿勢で関わっている.これからは,がんであっても,末期であっても家で過ごしたいという人がさらに増えてくると思われる.そのような方の痛みのケアに関わる機会も増えてくるであろうが,単に痛み止めの技術を修得して応用するというだけでは不十分である.痛みを持った人をトータルに理解し,尊重したうえでその人の療養環境をいかに快適なものにするのかという視点で関わることが重要である.
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