音楽でホッとひと息―現代人に贈る癒しの音楽
―ドビュッシー―「ビリティスの歌」/「フルート,ヴィオラとハープのためのソナタ」
竹重 敦
pp.155
発行日 1997年2月15日
Published Date 1997/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901620
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「癒しの音楽」と言っても,元々何の基準もなく,人によってその判断もまちまちであろう.一般的には「ゆったりとしたテンポの,静かで限りなく美しい音楽」ということになろうが,私はこんな風に捉えている.単に耳に快く響くだけのものやいわゆる抒情的な美しいメロディというだけのものは対象外である.耳に快く響くことは必須の条件だが,表面的な美しさだけでは駄目で,心の奥の琴線に触れる深さが不可欠だ.聴けども聴けども解明しきれない,神秘的かつ官能性を秘めた音楽が私にとっての癒しの音楽だ.世に音楽は数多(あまた)あれども,そんな音楽はそう沢山ある訳ではない.
その癒しの音楽にドビュッシーは欠かせない.ヨーロッパの長い音楽史を通じて,彼こそ癒しの音楽を最も量産した作曲家と言えるかもしれない.ドビュッシーの作品は決して多くはないのだが,その殆(ほとん)どが癒しの音楽の対象となりうるものばかりである.もちろん彼は癒しを目的として作曲した訳ではないが,実はドビュッシーの音楽のそもそもの特徴が,私の捉える癒しの音楽にそっくりそのまま当てはまるのである.
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