特集 訪問看護師の住環境整備支援
在宅ケアの日常的継続的支援者による住環境整備の支援―その意義と視点
鈴木 晃
1
1国立保健医療科学院健康住宅室
pp.524-529
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901513
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「住まいに合わせて暮らす」から「暮らしに合わせて住まいを工夫する」へ
写真は新潟県南魚沼郡大和町の住宅である。コシヒカリでも有名な米どころだが,同時に全国でも有数の豪雪地帯でもあり,写真のように1階の床を2メートルほど上げる「高床式住宅」が最近増えている。私はこの10数年,大和町でフィールドワークを続けているが,そこで面白いことに気づいた。この写真の住宅もそうなのだが,「高床式」で新築しても間取りは以前の住宅とまったく同じ,というものが少なくない。この数年は事情が少し変わってきていて,高齢者のいる世帯の新築住宅では,いわゆる「バリアフリー」対策がなされたものも増えてきた。「バリアフリー」あるいは「高床式」という点ではかなり変わってきたのだが,伝統的な「続き間」(二間つづきの座敷)中心の間取りについてはほとんど変わっていない。
写真の玄関階段の向かって左側は縁側である。縁側というのは,近所の人たちが庭伝いに訪ねてきて,ここでお茶を飲みながら世間話をする,そういった機能をもった空間だが,この「高床式住宅」では当然その機能はもちえない。しかし,そこに縁側が存在しているのだ。なぜ,そこに縁側が存在するのだろう。葬儀の出棺のときに玄関からは出さず縁側から出すため(外に仮設の足場を組む),という地元の方の話もあったが,「以前からそこにあったから」というのが,現在もそこに縁側がある理由だと私は考えている。
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