研究報告
介護保険開始前後における在宅痴呆患者の介護サービス利用と介護負担
野村 美千江
1
,
池田 学
2
,
繁信 和恵
2
,
福原 竜治
2
,
牧 徳彦
2
,
鉾石 和彦
2
,
小森 憲治郎
2
,
田辺 敬貴
2
1愛媛県立医療技術短期大学看護学科
2愛媛大学医学部神経精神医学教室
pp.222-230
発行日 2001年3月15日
Published Date 2001/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901284
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はじめに
介護の社会化を目指して介護保険が平成12年4月に施行された。さまざまな問題を有しながらも福祉保健医療の現場では在宅療養者および介護者の生活の質の維持向上を目的に日夜努力が続けられている。痴呆患者は高齢化率の増加とともに確実にその数が増加しているが,痴呆疾患の患者が少しでも長く自宅で生活を送り,かつその間の生活の質を高く保つには,社会資源を有効に利用するとともに家族の介護負担を軽減することが重要である。社団法人呆け老人をかかえる家族の会が平成11年10月に実施した全国実態調査1)では,介護者の86%が介護保険を申請するつもりであると回答し,さまざまな情報源により介護保険に強い関心を向けていると報告されている。
我々が町の行政とともに痴呆の在宅ケアシステムに取り組んでいる愛媛県中山町において得られた知見では,訪問調査結果と主治医意見書の状態像との乖離2),認定された要介護度と精神神経科医師の予想介護度のずれ3)が明らかとなり,在宅痴呆患者の1次判定や介護認定に関して痴呆性疾患患者の方が痴呆を有さない患者よりも低く判定されるという重大な課題が浮かび上がった。また同じく中山町で介護保険利用者の在宅高齢者102人を対象とした調査結果から,認定された要介護度と介護負担との間に相関関係がみられず,家族介護者にとって介護保険が必ずしも介護負担の軽減に有効に機能しない可能性が示唆された4)。
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