特別記事
訪問看護ステーションにおけるディグニティセラピーの可能性/訪問看護とディグニティーセラピー
無藤 清子
1,2
,
土川 稔美
1,2
1訪問看護ステーションしもきたざわ
2認定NPO法人ホームケアエクスパーツ協会
pp.296-306
発行日 2022年7月15日
Published Date 2022/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201874
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在宅医療・ケアの現場で向けられる問いに応える
在宅医療・ケアの現場は、その方ならではの暮らしと人生を大切にできる恵まれた場だ、と思うと同時に、応じることの難しい問いかけに直面する厳しい場でもある、と思います。私は、訪問看護ステーションで働く臨床心理士です。ここで利用者さんやご家族とお会いするようになって8年経ちました。その前には、家族介護者相談事業の相談員としても、在宅療養中のご本人を訪問していた経験があります。人の生死に関わる大変な現場だと改めて覚悟して訪問看護ステーションに入職した当初、同僚たちが利用者さんのご逝去について爽やかに話すのを聞きながら、“生ききった”という言葉がよく湧いてきました。“生ききって旅立つ”のをお手伝いしている仕事だと感じたのです。
うちのステーション(訪問看護ステーションしもきたざわ)を利用している方の多くは、がん・難病・慢性疾患を持ち、高齢です。長く在宅で療養生活を送っている方や、家で最期を迎えようと病院から戻られたばかりの方などさまざまです。どの方も、人生の最期まで生活といのちの質が保たれて、自分らしくあることを望んでいます。けれども、病状がさらに厳しく変化したり、周囲との関係の難しさを改めて痛感したり、さまざまなことに見舞われて、人生を問い直すこともあります。訪問医療・訪問介護を利用しながら在宅で暮らしている人たちが、“かけがえない私が今を生きている”と感じて、心穏やかに日々を過ごすことができるためには、どのようなことがあるとよいのでしょうか。
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