連載 往復郵便・第6回
便にまつわるあれこれが承認される場
榊原 千秋
,
頭木 弘樹
pp.692-693
発行日 2021年9月15日
Published Date 2021/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201753
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小さな頃から空を見上げるのが好きです。この夏も青空を静かに流れる真っ白な雲や入道雲を見上げて、今ここにいる幸せを感じていました。常に形を変えながら動く雲は想像力を刺激してくれます。私が生まれた四国の西南は「台風銀座」と呼ばれる場所で、床下浸水なんてしょっちゅうでした。暴風雨の中、家中の板戸を閉めると、祖母のもとに集まり昔話を聞きます。ろうそくの灯の中で過ごす時間のなんと豊かだったことか。一瞬、さっきまでの風が嘘のように止むことがあります。外に出て、祖母が促すままに空を見上げると台風のおへそ。あのワクワク感は忘れられません。頭木さんとの往復郵便を受け取るたびに、あのときのワクワク感を思い出します。
頭木さんが取り上げられた雑誌『AERA』(2021年5月31日発行号)の「現在の肖像」を読みました。頭木さんの著書に対して読者から寄せられた、「無理して元気に見せる必要なんてない。倒れたままでもいいんだと思えるようになりました」という感想に、はっとしました。自己否定感と自己肯定感って紙一重だな、と。私が25年間こだわってきたことも解けていくようです。
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