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プランはポジティブに、建設的に
メリデン版訪問家族支援(以下、ファミリーワーク)で用いられる「良い状態を保つプラン」という言葉を目にするのは初めてでも、「再発防止プラン」「症状管理」「早期症状マネジメント」といった形で見聞きしたことがある方は多いのではないでしょうか。これらに共通していることは、精神疾患が再発しやすいことから、再発の前に出現するいわゆる前駆症状や再発の警告サインを把握し、早期に何らかの対策を講じることで、再発予防をめざすという点です。
しかし、ファミリーワークにおいては、目的を端的に表現する「再発防止」ではなく、あえて「良い状態を保つ」という言葉を用いています。それは、ファミリーワークにおいて大切とされている、ポジティブ(前向き、肯定的)であること、建設的であることによるものです。すなわち、再発を予防する、危機的な状態を回避する目的は同じですが、「再発」「クライシス(危機)」というネガティブな表現は避け、より肯定的・建設的な「良い状態を保つ」という言葉を用いているのです。実際に、とある別のプログラムで「再発防止」についてグループで考えたとき、統合失調症が再発して入院した経験のある方が、「『再発』という言葉を見るだけで嫌な感じがします。再発は地獄です。地獄です。」と言われました。その方に「再発防止というと、とてもつらいと思うので、『良い状態を保つ』としましょうか」と提案したところ、「そう考えると安心します。自分も今のままでいたいから、やる気になります」と言われました。病の経験をされた方にとって、病を見つめることが、時にいかに厳しいことなのか、一方で同じものを指し示すものであったとしても、ポジティブな言葉を用いることがいかに大切なのかを教えられました。
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