連載 一器多用・第55回【最終回】
自分の頭と身体で考える
岡田 慎一郎
pp.1048-1049
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688200349
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先日、以前から興味があった、ある靴屋に行きました。その靴屋は、ヨーロッパがルーツで、その人に合った靴に調整してくれる手間暇が最大の売り物。まず、5足ほどはき比べ、靴ひもも独自の結び方で調整し、フィットしたものを決定。その後、インソールを足裏にぴったりと合わせるため、足裏の体重のかかり方の傾向を測定する機械の上に立つように言われました。人間は普通に立っているときにも体重のかかり方に偏りがあるため、それを正確に計測して判断し、偏りがなくなるようにインソールを削ります。私に合ったものを作るための計測というわけです。計測器はガラス張りになっていて、その上に立つと、すぐ目の前のモニターに足底圧が強いほど赤、低いほど青で表現されるしかけで、ひと目で足裏のバランスがわかる優れ物でした。
私は靴下を脱ぎ、測定器の上に立ちました。すると、店員が困った顔をして、「すみませんが、ガラスの測定域の中で足を揃えて立っていただけませんか」と言ったのです。足元をみると、私の足はガラス板の外にありました。無意識に足を広げて立っていたのでした。
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