連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第36回
「アール・ブリュット」の日常〈その2〉
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.576-577
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102843
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滋賀県甲賀市のやまなみ工房の敷地内にはギャラリー「gufguf」も併設されていて、ここには工房の人たちの作品をはじめ、全国の「アール・ブリュット」作家の作品が入れ替わり展示されている。
入っていきなり、びっしり並んだ小さな彫像たちに圧倒された。その広いギャラリーの床の真ん中に同心円状に配置された、1つひとつはほんの人差し指の高さくらいの粘土の人。離れたところから見て、まずその膨大な数に圧倒される。2000体、いやもっとあるだろうか。近づいて見ると、それらは少しずつ異なる笑みを浮かべてこちらを見ている。これは何かの型にはめて作られたのではない。どれも手でこねあげられ、指でひねられたものだ。工房のメンバー、山際正己さんが一人で作ったのだという。粘土の人は「正己地蔵」と呼ばれている。なるほど、お地蔵さんのようにいくつもある。しかしお地蔵さんはこれほどひとところにたくさんはいない。
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