連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第37回
アール・ブリュットの「日記性」〈その1〉
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.666-667
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102868
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前2回では、知的障害のある方がさまざまな作業を行なう「やまなみ工房」(滋賀県甲賀市)におじゃましたときの話から、アール・ブリュットがつくられる過程について書いたのだけれど、今回は、アール・ブリュットにしばしば表われる「日記性」について考えてみようと思う。
前回紹介した山際正己さんの彫像がそうだけれど、アール・ブリュットの作家たちの作品は、毎日繰り返される制作の時間、もしくは作業や動作の時間につくられていることが多い。絵を描く、文字をつづる、粘土をこねる、布に刺繍をする。そうした日課を長いこと続けるうちに、その人にあったやり方が見つかってくる。言い方を変えれば、その人に見合ったやり方だけが残り、長く続くということになる。これを「持続可能な形式」と呼ぶことにしよう。
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