巻頭シリーズ アートとケア アール・ブリュットから受けとるもの・5
アール・ブリュットがつくる,シームレスな社会
青柳 正規
1
1多摩美術大学
pp.412
発行日 2020年5月10日
Published Date 2020/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201573
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アール・ブリュットとコンテンポラリー(現代芸術)が,もっと同じ土壌で展示されることが,双方にとって大事なことだと常々考えてきた。アール・ブリュットを特別扱いするのではなく,作品そのものの力を感じられる環境。それこそが,両者の境目をシームレスにして,障害者と健常者を自然に結び付けていくのだと思う。アール・ブリュットはまさに,健常者と障害者の垣根のない社会,つまりシームレスな社会を築いていくための,トップランナーとしての力を持っているのだ。
また,アール・ブリュットには,周りの理解者が必要である。作品の多くは,障害者福祉の現場で生み出されていて,それが世に出るには,多方面の関わりが必要だ。制作現場の活動を支える人,作品を見いだす人,展覧会で作品の魅力を紹介する人。多様で多才な人材が連携してアール・ブリュットを支えている。だからこそ,その作品が社会に出て評価を得たときは,作家はもちろんのこと,それを選んだ周りの人たち—作家を支え,ケアにあたる人たち—も,誇りを感じることができる。
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