連載 介護における誤嚥事故の裁判例を読む・1【新連載】
特別養護老人ホームR事件
和泉澤 千恵
1
,
横田 智子
2
,
平林 勝政
3
1國學院大學大学院
2川崎市立商業高等学校
3國學院大學法科大学院
pp.816-819
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101709
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
連載を始めるにあたって
高齢社会が到来し,ケアを必要とする人の増加とともに,多数の介護や看護に関連した事故が,後を絶たず報告されている。介護事故についても民事訴訟として裁判にかけられた事例がでてきており*1,なかでも誤嚥事故は,その者の生命に直結することから裁判例も少なくない。食事による誤嚥事故は介護や看護の現場で日常的に起こりうる可能性をもっている。誤嚥をおそれるあまり,その予防と称して,いたずらに胃瘻を造設するケースが増加し,このことがまた介護現場では医療行為をめぐる問題や在宅における介護の担い手不足の問題を引き起こしている。
食事は単に栄養や生理的欲求を満たすのみではなく,食べる楽しみをとおして季節を感じる,生きる喜びを与えるなど,その人のQOLに大きく関わっている*2。食事の介助に際しては,生命に危険が及ばないよう,安全の確保が必須である一方で,食の楽しみの確保という点にも配慮が必要であり,両者をどのように両立させるのかが鍵となる。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.