連載 介護における誤嚥事故の裁判例を読む・3
食事提供[その2] 食事介助の方法
小谷 昌子
1
,
酒井 美絵子
2
,
平林 勝政
3
1早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程
2日本赤十字看護大学
3國學院大學法科大学院
pp.1015-1019
発行日 2010年12月15日
Published Date 2010/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101754
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これまで本連載で取り上げてきた裁判例は,いずれも食事中の誤嚥により介助対象者が窒息したケースである。そもそも誤嚥とは「飲食物,唾液/腹腔分泌物,胃内容物が声門をこえて気管内に侵入すること」であり,食物の嚥下時に限らず,唾液などをはじめとする分泌物や咽頭に貯留したものが気管に入り込むことも指す*1。たとえば就寝中などにおいても誤嚥は起こることがあり,さらには肺炎も誤嚥により引き起こされる問題として重要なものである。このように,誤嚥という現象にまつわる問題の全体像からすれば,裁判例の扱う食事中の誤嚥による窒息は,非常に限られた問題でしかない。
もっとも,誤嚥性肺炎の問題と同様,食事中の誤嚥による窒息も非常に重大な問題となる。食事において誤嚥が起こり,これが窒息につながることは,ごく日常的におこなわれる食事が,突然,死をもたらすことを意味するからである。したがって,誤嚥による窒息という点に着目すれば,より一層「いかに回避するか」が重要な課題となる。
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