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はじめに
介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと,そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと」と定義され,単に高齢者の運動機能や栄養状態といった個々の要素の改善だけをめざすものではなく1),心身機能の改善および環境調整を通じた活動および参加の向上とともに,生活の質(quality of life:QOL)の向上と健康寿命の延伸をめざすことに重点が置かれる.2000年に始まり2006年に改定された介護保険制度では要支援・要介護高齢者,各市町村の介護予防事業では一般・特定高齢者がそれぞれ対象となる.主な介護予防サービスには運動器機能向上,口腔機能向上,栄養改善,閉じこもり・認知症・うつの予防と支援が含まれ,そのための通所,訪問,入所の各サービスが体系化されている.これらの介護予防サービスは運動介入を必要とするものが多く,理学療法士の運動療法に関する専門性とアドバンテージが発揮される分野と考えられる2).
このうち通所サービスは,特定・要支援・要介護高齢者において,実生活の確認,定期的な運動介入の実施,日常生活活動の自立に重要な離床時間3)と活動量の確保,社会参加の機会の獲得を目的とした運動器機能向上を図り,理学療法による一次的な効果とともに,理学療法士以外の関連職種との協働による二次的な効果が期待され,介護予防に資する意義は大きい4).また近年では,理学療法士数の増加とともに通所サービスへ関与する理学療法士も増加傾向にあり5),通所サービスでの運動器機能向上は理学療法士が密接に関連する介護予防事業のひとつであるといえる.少子高齢化の進行に伴い介護保険を含む社会保障財政が厳しくなる環境下において,社会的な認知と適切なファイナンスを獲得し,介護予防を有用なものにするためにも,サービス提供者となる理学療法士が自らのサービスの有効性について中長期的に継続的な検証を行うことが求められており6),年々,国内において介護予防の効果に関する報告がなされている.
本稿では,国内における主な介護予防対象である特定・要支援・要介護高齢者に対する運動器機能向上に基づいた通所サービスの介護予防効果に焦点を当て,近年の介護予防効果に関連する事業報告と研究報告を交えて述べる.
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