『逝かない身体――ALS的日常を生きる』大宅壮一ノンフィクション賞受賞記念企画
―【受賞に寄せて】ALS当事者の立場から―いつか焼かれる現実を知ってからの生き方
橋本 みさお
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1特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンター「さくら会」
pp.537
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101643
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川口が初めてわが家にやって来たのはいつだったかな。たしか,ゆで卵のような妹と一緒でした。母親がALSを発症した場合,「成人した娘が2人いること」が療養の最低条件の時代。まさにこの家は理想的ではないかと思いました。5分話すと,5分泣いているような川口だったのです。
私はたぶん,世界で一番ALSが好きなALS患者だと思っています。たしかに,発症時は,他のALS患者と同じように医学書を鵜呑みにして,「私が死ぬの,まさか私が火葬されるの?」と思ったほどで,心底驚いたものです。
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