連載 わたしのことをわたしから・33
乳がんⅣ期を遊泳中―その5
内田 あさみ
pp.60-61
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101519
- 有料閲覧
- 文献概要
3度目となる主治医,T先生を初めて尋ねたのは2007年の6月だった。今度ばかりは自分で選んだのだから,自分の予想が間違っていたとしても全責任は自分にあるし,もうあとがない。そういう切羽詰った気分で新しい病院に出向いた。
T先生は予想していたよりもずっと若く,頭脳明晰で鋭いお人柄という印象を受けた。初対面のせいもあって緊張は解けず,最初に「これからどんな治療を望みますか?」と聞かれたとき,とんちんかんな答えをしたのを覚えている。しかし,積極的な治療を望むのか,それとも支持的な治療を望むのかというこの質問は,大げさに言えば患者の基本的人権を初めて認められたようで,ほんとにうれしかった。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.