連載 精神科医の家族論・2
母親と息子・1―精神医学上の学説より
服部 祥子
pp.408-411
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101331
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母親というもの~文化の相違・時代の変遷のなかで
私は1970年代に3年間ニューヨークで暮らしたが,米国の母親は日本とはずいぶんちがうと実感した。米国の家庭はほとんどが夫婦中心の核家族で,父親も母親も子どもの前で自分たちがそれぞれ男性であり女性であることをごく自然に示す。
それに対しかつての日本の「母親というもの」は,生身の女性性を微塵も示さず,ひたすら深い母性愛を中核にもつというイメージが伝統的な風土の中に根付いていた。その結果子どもは自己犠牲的・献身的な母親の悲劇的な立場に同情し,母親への思いを熱くし,強い愛着と懐しみを大人になって家を出てからも胸に抱き,不幸や困難な状況の中にある時の何よりも大きな心の支えとした。
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